新型コロナの陰性証明を見せることで飲食店の人数制限を緩める「対象者全員検査」が低調だ。感染拡大時の緩和策として今回の「まん延防止等重点措置」で打ち出されたが、都内の飲食店の導入は3・5%にとどまる。検査キット自体が不足する中、飲食店からは実効性に疑問の声が上がる。
2月初旬、東京都北区の「赤羽一番街商店街」。平日の午後8時前、開店中の店舗を50近く確認したが、「対象者全員検査」の導入を示すピンク色のステッカーは見つけられなかった。
「『やっている感』を出すための中途半端な対策に見える」。商店街の一角にあるイタリアンバル「赤バル レッツェ赤羽店」の寄木一真・営業部長(44)は辛口の評価だ。
都は今回の重点措置で飲食店に、①営業を午後9時までとし、酒類提供は同8時まで②営業を同8時までとし、酒類提供はしない、のどちらかを選ぶよう要請。人数制限は「4人以内」だが、政府の基本的対処方針に沿って全員の陰性が確認できれば5人以上も可とした。
対象者全員検査の仕組みは都に登録すれば導入できるが、このイタリアンバルは導入せず、5人以上の客は「2人と3人」「3人と3人」などにテーブルを分けて対応している。寄木部長は「仮に導入しても、同じ空間に証明がある人とない人が混在すれば意味がない」と突き放す。
店の売り上げは忘年会需要の高まった昨年12月、コロナ禍前の8割ほどまで回復したが、1月は感染者の急増で激減。今は約2割まで落ち込んだ。「経営も厳しい中で入店を断るのは現実的に難しい。大人数の客が来れば席を作る努力をする」
銀座で日本料理店を営む男性店主(61)は仕組みを導入したが、「対策として成立していない。陰性証明がない客を断ったら関係はぎくしゃくする」。検査キットそのものが不足し、客がスムーズに検査を受けられるのか自体に疑問をもつ。「現実に対策が追いついていない。ちぐはぐ感しかない」
都内で「対象者全員検査」の仕組みを導入したのは、認証店約10万8千店のうち3831店(3日時点)で全体の3・5%。検査キットの不足が低調の一因とみられる。都の担当者は「店にとっては人数制限を緩和できても、時短は変わらないのでメリットが少ないと判断する可能性がある」と話す。
ワクチン2回接種で緩和、都に誤算も
誤算もあった。都はもともと利用人数を緩和する手段として陰性証明ではなく、ワクチンの2回接種の証明を想定していた。昨年11月には接種歴をスマホに表示できるLINEを使った都独自のサービス「TOKYOワクション」を提供し、40万人が登録した。
だが、オミクロン株による第6波では、ワクチンを2回接種しても感染する「ブレークスルー感染」が続出。政府はワクチンと検査を人数制限を緩和する手段とする「ワクチン・検査パッケージ」を原則、一時停止し、「対象者全員検査」に切り替えた。
都もスマホの接種証明を人数制限の緩和に利用することは停止。10日から3回目接種の登録ができるようシステムを改修し、人数制限に活用できるか今後検討するという。(山口啓太、小林太一)
記事後半では、政府が原則一時停止した「ワクチン・検査パッケージ」を全国で唯一、知事の判断で活用している埼玉県の状況を報告します
パッケージ唯一活用の埼玉、周知に課題
「ワクチン・検査パッケージ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル